2019年(R1)8月21日(水)2名
武蔵五日市駅からバスで終点の上養沢で降りる。ここはあきる野市の上養沢地区で付近には養沢川が流れ養沢神社と小集落がある。その昔、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征で御岳山に立ち寄ったとき、疲れた兵士たちに沢の水を飲ませた。すると、たちまち疲労が回復したので沢の名を養沢にしたという伝説がある。
林道御岳線沿いの養沢川上流が御岳沢である。御岳沢の源流は鍋割山、御岳山、日ノ出山、高岩山である。その流れが綾広ノ滝やロックガーデン、七代ノ滝を経て養沢川となり大岳沢と合流する。養沢川は秋川と合流して多摩川に至る。
バス停前で身支度して林道を歩き始める。右手に清流の養老川(御岳沢)が流れている。直ぐに左手にお地蔵さんが出てくる。お地蔵さんの右側には珍しい二十三夜塔(写真中央)があった。その右隣りが馬頭観音で、あきる野市役所HPの石造物・小宮地区には次のような説明文があった。「馬頭観音 弘化四年(1847) 自然石に見事な草書体の文字塔。上岡講中は毎年正月に上岡の馬頭観音堂(東松山市)に参詣し、お札を頂いて来る代参講で、頂いて来たお札を講中に配った」。 この林道は七代の滝直下迄続き、終点は行き止まり道になっている。終点周辺は車が止められるスペースがあるが、現在その手前で沢からの土砂崩落があり車は通行できない。そのためその手前数百メートルに停止板があり、その周辺には数台駐車できるスペースがある(東京都森林事務所HPでは「通行止め:土砂崩落のため」となっている)。林道の長さは約4.4km、標高差約380m、ほとんどが舗装道で徒歩1時間20分ほどである。この林道は「御岳林道」「養沢林道」「上養沢林道」などとも呼ばれており紛らわしい。正式名称は東京都の「林道御岳線」である。
上養沢から沢の流れやタマアジサイなどを見ながら15分ほど歩くと、右手に日ノ出山への登山口が出てきた。直ぐそばに古いトイレがあり使用できそうだ。風はほとんどなく蒸し暑い。曇りがちの天気で時々薄日が差す。長い林道歩きで暑さが心配だった。また天気が不安定でにわか雨もありそうだ。そのためその時の気象状況に応じてルート変更も考えていた。雨が降ったり、カンカン照りだったら日ノ出山へコースを変えようと思っていた。しかし林道沿いは意外と木立も多く日影になり歩きやすい。車もほとんど通らず一台だけ追い抜いて行った。途中の橋のある所で小休止する。ここからは道路の傾斜がややきつくなった。
1時間半近く歩くと前方に土砂崩れ地点が見えてきた。土砂崩れの高さは2mほどだろうか。踏み跡もあり難なく越えられた。右手を見ると土砂崩れの沢が上に伸びていた。土砂崩れを越えると直ぐ林道終点であった。ここから七代ノ滝までの、やや険しい登山道となる。15分ほど足元に注意しながら登り下りすると七代ノ滝に到着した。
七代ノ滝周辺の地面は岩盤である。岩盤の間に小さな沢が流れている。滝は岩陰に隠れていて沢を渡らないと見えない。その沢に2本の丸太が掛けられている。また、沢の中ほどの飛び石伝いでも渡れる。ただどちらも滑りやすいので注意を要する。七代ノ滝(ナナヨノタキ)は大小七段(八段とも)の滝で成り、全体の落差は50mほどである。実際に見えるのが七代ノ滝の一部で連続した滝の中ほどにあり落差は十数メートルである。沢を渡ると岩蔭から忽然として白い滝が現れる。そして周りが黒い岩壁なので滝の姿がより鮮烈なのだ。
七代ノ滝の周囲の岩壁にはイワタバコの葉が沢山あり、咲き残りの花が少しあった。また目立たないが黄色いタマガワホトトギスが今が盛りと咲いていた。
七代ノ滝を後にして天狗岩に向かう。鉄階段(梯子)が連続して出てくる。長さ10mほどの階段が5,6ヶ所ほど出てくる。階段と階段の間はむき出しの木の根っ子だ。それなので天狗岩まで標高差60m近くを登ることになる。階段を登り切ると登山道に合流し、天狗岩の巨岩が出てくる。
天狗岩の手前の方の岩には登れるように鎖がついているが、高いところが好きな人向きである。
奥の方の岩は天狗が上を向いて巨大な鼻を突きたてているように見える。この天狗岩から上流の綾広の滝までをロックガーデン(岩石園)と呼ばれている。ロックガーデンの沢沿いには大小様々な苔むした奇岩があり清流がある。そのため1935年(昭和10年)に当時の東京府が御岳沢沿いの約1kmを岩石園の遊歩道として整備したのである。2000年(平成12年)には東京都の名勝・奥御岳景園地として指定されている。ロックガーデンの範囲は七代ノ滝を含める場合もあるようだ。しかし七代ノ滝は子供連れには危ないところだ。それに天狗岩まではかなりの高低差もある。だから七代ノ滝~天狗岩間はロックガーデンには含まれないのだ。
フシグロセンノウ(節黒仙翁)ナデシコ科の多年草で日本特産 草丈40~90cm 花期は7~10月。山地の林の中や沢沿いなどに自生する。鮮やかなオレンジ色は暗い日陰でもよく目立つ。名前は茎の節が太く紫黒色を帯びることと、京都嵯峨の仙翁寺で最初に発見された「なでしこ科」の植物に由来する。
ロックガーデンの清流の中にある飛び石は大きくて平なので歩きやすい。沢の景色を眺めながら25分ほど飛び石を渡り歩いて行く。沢のそばに御岳沢休憩所(東屋)があり隣にトイレも設置されている。途中で小雨が降りだし調度よい頃合いなのでお昼の休憩とした。
雨も止み休憩後は綾広ノ滝へ向かう。10分ほど沢沿いの道を歩くと薄暗い岩の間に綾広ノ滝が見えてきた。綾広の滝は落差10mほどで滝つぼの深さ1.2mほどだそうである。御岳神社の神官が修行を行う「修行みそぎの滝」ともいわれており鳥居が立てられている。
綾広ノ滝からはロックガーデンを離れて山道を御岳山ケーブル駅に向かう。途中にある天狗の腰掛杉を見る。樹高60mの大木で天狗が腰掛けたとされる枝ぶりが面白い。茶店やベンチ、トイレがある長尾平で小休止する。御岳神社へは登らずに下を通過した。
馬場家御師住宅(ばばけおしじゅうたく)は茅葺屋根の歴史的建造物(住宅建築)で武蔵御嶽神社の宿坊のひとつ。東京都指定有形文化財である。江戸末期の1886年(慶応二年)に建築された。2015年(平成27年)より茅葺屋根の葺き替え及び建物内部の改修工事が行われ、2018年(平成30年)3月に竣工した。武蔵御嶽神社の神主・御師の営む宿坊・茶処「東馬場(ひがしばば)」でもある。
御岳山ビジターセンターの先で富士峰園地と御岳山ケーブル駅の分岐がある。富士峰園地へは「御岳山ケーブル駅へ行く道」の左側を行く細い道で道標も小さい。しばらく坂道が続くがひと登りすると富士峰園地である。リフト駅の大展望台からは霧がたなびく麓が見えた。ここからの夜景や眺めは素晴らしく新東京百景の一つに数えられている。新年の元旦早朝には多くの人々が登山し御来光を迎えるそうだ。
富士峰園地のレンゲショウマ群生地では数万本が自生しているという。ここは全国でも珍しいレンゲショウマの群生地で8月にはレンゲショウマ祭りも開催される。今日は盛りからはやや過ぎたようだが、それでも斜面には数多くのレンゲショウマが点々と咲いていた。群生地全体の規模は高さ50mほど、幅100m以上はあろうか?全体は見渡せないが周りを見回したところでは、まだかなりの数の開花があった。斜面の小径のあちらこちらでは数十人ほどがカメラを構えて撮影をしている。多くの人が三脚を立ててじっと押し黙って撮影しているのだ。異様というか不思議な光景である。
レンゲショウマ(蓮華升麻)は日本特産の花。キンポウゲ科の多年草、花期は7月~8月。花が蓮に葉がサラシナショウマ(晒菜升麻)に似ているので、蓮華升麻の名が付いている。草丈は80センチ程度となり丸い蕾をつける。赤みを帯びた光沢のある薄紫の気品ある花が様々な向きで咲く。花の直径は4cmほどで萼も花弁も共に花弁状に見える。深山のやや湿った薄暗いが木漏れ日のある林床に咲くことが多い。登山者に人気のある花で「森の妖精」などとも呼ばれる。今まで行った山では、三ッ峠山、本社ヶ丸、十二ヶ岳、今倉山、大谷ヶ丸などで見かけた。
30分おきのケーブルカーは満員だった。小雨がぱらつきケーブル下のバス停は長蛇の列だ。やはりレンゲショウマを見に来ている人が多いんだな。乗り切れずバスが1台増発された。2台目のバスに乘り御嶽駅に到着した。
コースタイム 歩行3時間30分 休憩1時間30分 距離10.3km 累積の登り1,313m 下り-839m JR五日市線武蔵五日市駅(バス)8:17~8:45上養沢バス停8:50出発→林道御岳線(15分休憩)~10:05土砂崩れ地点→10:20七代の滝10:35→天狗岩~ロックガーデン→11:20休憩舎11:40→11:57綾広ノ滝→天狗の腰掛杉→12:35長尾平12:45→富士峰園地分岐→富士峰園地→13:20リフト駅・大展望台→レンゲショウマ群生地(20分撮影)→13:50ケーブル御岳山駅14:15発~ケーブル滝本駅→ケーブル下(バス)~JR青梅線御嶽駅
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